神経発達・再生医学分野の博士課程の宮本さんらの論文がFrontiers in Neuroscience誌に掲載されました。
Miyamoto T, Kuboyama K, Honda M, Ohkawa Y, Oki S, Sawamoto K.
High spatial resolution gene expression profiling and characterization of neuroblasts migrating in the peri-injured cortex using photo-isolation chemistry.
Front Neurosci. 7:18:1504047 (2025)
DOI:10.3389/fnins.2024.1504047
https://www.frontiersin.org/journals/neuroscience/articles/10.3389/fnins.2024.1504047/full
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39840011/
脳が傷害を受けると、脳室下帯で産生された新生ニューロンの一部が傷害部へ向かって移動することが知られています。本研究では、脳傷害後に傷害部へ移動する新生ニューロンはどのような特徴を持つのかを明らかにしました。解析には、空間トランスクリプトーム法の一つであるPhoto-isolation chemistry (PIC) 法 (Honda et al., STAR Protocols, 2022) を用いました。この技術により、特定の場所に存在する細胞が発現している遺伝子を調べることができます。我々はこの技術を用いて、脳室下帯に分布する新生ニューロンと、傷害部へ向かって移動する新生ニューロンの遺伝子的特徴を比較しました。その結果、窓外部へ向かって移動する新生ニューロンと脳室下帯に分布する新生ニューロンでは異なった遺伝子発現プロファイルを有していることを明らかにしました。傷害部へ向かって移動する新生ニューロンでは、傷害部への移動能や細胞死抵抗性に関わる遺伝子の発現が上昇している一方で、未分化状態の維持や細胞増殖に関わる遺伝子の発現が低下していることが明らかになりました。さらに、この細胞増殖に関連する遺伝子の発現低下には、傷害部から分泌されるTransforming Growth Factor-β (TGF-β) が関与している可能性を見出しました。本研究で得られた知見は、傷害を受けた脳に対する再生医療の開発に貢献することが期待されます。
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