東部医療センター 精神・認知・行動医学分野の助教の古谷先生らの論文がFrontiers in Psychiatry誌に掲載されました。
Furutani N, Murata Y, Miwa W, Nakamura M, Nakajima-Ohyama KC.
Individual and environmental risk factors for post-traumatic stress among hospital nurses after the 2024 Noto Peninsula earthquake in Japan.
Frontiers in Psychiatry 10.3389/fpsyt.2025.1631694 (2025)
https://doi.org/10.3389/fpsyt.2025.1631694
2024年1月1日に発生した能登半島地震では、能登地域で大きな被害が生じました。震源に近い公立能登総合病院の職員も、地震そのものの恐怖体験に加えて、避難生活のストレス、家族の死や病気、家屋の損壊、ライフラインの停止、経済的負担など、さまざまな困難に直面しました。これまでの研究では、年齢などの個人要因がストレス反応と関係していると報告されています。そこで本研究では、同院に勤務する看護師を対象に、地震後のストレス症状とその背景要因を分析しました。
その結果、多くの要因がストレス症状と関連していましたが、さらにパス解析を行うことで、要因どうしの関係構造が明らかになりました。
- 加齢は一部のストレス症状を直接高めましたが、全体としては、地域の脆弱性や家屋の損害、経済的ダメージを通じて間接的に影響していました。
- 家族の健康問題も、直接的にストレスを増やすと同時に、経済的負担を介して間接的にも悪影響を及ぼしていました。
- 回避的なストレス対処(考えないようにするなど)は、かえってストレスを悪化させる傾向がありました。
(※本研究は一時点での観察データに基づく解析であり、統計的関連性を示すものであって、因果関係を断定するものではありません。)
興味深いことに、加齢そのものがストレスリスクを高めるというよりも、高齢の人ほど脆弱な地域や古い住宅に暮らしていることが、結果的にストレス症状を強めている可能性が示唆されました。公衆衛生の視点からは、こうした地域的な脆弱性に焦点を当てた支援が、精神的ストレスの軽減につながると考えられます。本研究の成果は、今後の災害時支援や政策立案に役立つ知見と考えています。
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